首都直下地震で生き残るための
72時間 行動マニュアル

発生直後から72時間の行動が生死を分ける。「頭を守る→火の元→靴→ドア」から始まり、避難・情報収集・在宅判断まで、時系列で解説します。

参考:内閣府防災情報 / 東京消防庁防災マニュアル / 日本赤十字社防災ガイド

なぜ「72時間」が重要なのか

大規模地震が発生した後、人命救助の限界は約72時間(3日間)とされています。この時間を超えると、生存者発見率が急激に低下します。また、行政・自衛隊・消防による救助活動が本格化するまでの時間も、この72時間が目安です。

首都直下地震では東京全域が同時に被災するため、外部からの救援が大幅に遅れることが予想されます。最初の72時間は、基本的に自分と家族の力で生き延びる必要があります。

72h
生存救助の
タイムリミット
3
最低限必要な
備蓄量の目安
77%
近隣住民による
救出割合(阪神)
自助
共助
最初の行動は
自分と近隣で
💡 阪神大震災からの教訓
1995年阪神大震災では、倒壊した建物から救出された人の約77%が近隣住民の手によるものでした。消防・自衛隊は残りの23%。「助けを待つ」より「助け合う」ことが生存率を高めます。
📋

発生から72時間の行動タイムライン

発生
直後
フェーズ0:揺れている間(0〜2分)
1
頭を守る
テーブルの下に潜る。テーブルがなければクッション・バッグ・腕で頭を守る。揺れている間は絶対に動かない
2
倒れそうな家具・窓から離れる
冷蔵庫・本棚・テレビなど大型家具は最初に倒れてくる。ガラス窓・食器棚からも距離を取る。
3
揺れが完全に収まるまで待つ
P波(縦揺れ)の後にS波(横揺れ)が来る。揺れが弱まっても完全に止まるまで動かない。余震も想定する。
🚫 揺れている間に絶対やってはいけないこと
火の元を消しに行く・外に飛び出す・エレベーターに乗る。揺れている間の行動は命取りになります。現代のガスはマイコンメーターが自動遮断するので、揺れ中に台所に行く必要はありません。
0〜
30分
フェーズ1:揺れが収まった直後(0〜30分)
1
靴を履く
散乱したガラス・陶器の破片で足を切らないために最初に靴を履く。裸足・スリッパは危険。
2
ドアを開けて脱出経路を確保
建物のゆがみでドアが開かなくなることがある。まず玄関ドアを開けてから次の行動に移る。
3
火の元を確認・消火
ガスは自動遮断されている可能性が高いが、ストーブ・電気コンロは目視で確認。小さい火は今すぐ消せるなら消す。煙が出ている場合は避難優先。
4
家族・同居者の安否確認
声を出して確認する。応答がない場合は室内を素早く確認するが、建物が不安定な場合は無理に入らない
5
建物の安全確認
大きな亀裂・傾き・柱の損傷がある場合は在宅を諦めてすぐ避難。判断に迷う場合は外に出ることを優先する。
30分
〜3時間
フェーズ2:近隣対応と情報収集(30分〜3時間)
1
近隣の安否確認・救助
声をかけ合う。倒壊建物に閉じ込められた人がいれば、専門機器がなくても手や棒で瓦礫を取り除く初期救助が有効。二次崩壊に注意。
2
ラジオ・NHKで情報収集
スマホは輻輳して繋がりにくい。ポータブルラジオが最も信頼できる情報源。津波・火災・余震情報を確認する。
3
家族への連絡(171・SNS)
NTT災害用伝言ダイヤル「171」に録音。Twitter(X)は比較的繋がりやすい。LINEの「既読確認」も有効。
4
ガス・水道・電気の元栓を閉める
ガスメーターの復帰ボタンは専門家確認前に押さない。漏水・異臭がある場合は元栓を閉める。停電の場合はブレーカーを落としておく(通電火災防止)。
3〜
24時間
フェーズ3:避難か在宅かの判断(3〜24時間)

この段階で最大の判断が迫られます。避難所に行くべきか、自宅に留まるべきか。建物が安全で備蓄があれば、在宅避難が原則です。

✅ 在宅避難が正解のケース
建物に大きな損傷がない / 7日分の食料・水がある / トイレが使える / 火災リスクのないエリア / 乳幼児・高齢者・障がい者がいる
🚨 すぐ避難が必要なケース
建物に大きな亀裂・傾きがある / 近くで火災が発生している / 津波・洪水の危険がある / 水・食料が全くない / 医療が必要な怪我がある
在宅避難する場合
備蓄品を取り出し、節水・節電を開始。情報収集を継続し、状況が悪化したらすぐ避難できる準備をしておく。
避難所へ行く場合
非常袋を持って指定避難所へ。移動ルートの安全を確認してから行動。倒壊建物・断線した電線・割れたガラスに注意。
24〜
72時間
フェーズ4:生活維持と救援待ち(24〜72時間)
1
水・食料の計画的消費
いつ支援が来るかわからない。1日の摂取量を計算して計画的に消費する。水は飲料水を優先し、生活用水(トイレ・清潔)は別管理。
2
衛生管理(トイレ・感染症予防)
断水時は簡易トイレを使用。手洗い・消毒を徹底する。避難所では感染症が蔓延しやすいため、マスク着用・手洗いを習慣化。
3
メンタル管理と相互支援
パニック・不安・疲労は判断力を低下させる。十分な休息・睡眠を確保する。情報は公式ソースのみ信頼し、デマに惑わされない。
4
継続的な情報収集
ライフライン復旧情報・給水車・物資配布場所・避難所開設状況をラジオ・市区町村の広報で確認し続ける。
🚫

地震直後に絶対やってはいけないこと

揺れている間に火を消しに行く
現代のガスメーターは震度5以上で自動遮断されます。揺れ中に台所へ向かうことで家具の下敷きになるリスクが高まります。火の確認は揺れが完全に収まってから。
裸足で歩く
地震後は割れたガラス・食器・陶器の破片が床に散乱します。被災後の怪我の多くは足の裂傷です。揺れが収まったらすぐ靴を履いてください。
エレベーターを使う
地震後はエレベーター内に閉じ込められる可能性が高い。揺れを感知したエレベーターは全階に停車する機能がついていますが、故障時は長時間閉じ込められます。必ず階段を使用。
発生直後に帰宅しようとする
発生から3時間は道路が混雑・危険な状態です。東京では約300万人の帰宅困難者が発生することが想定されています。職場や安全な場所に一時留まり、状況を確認してから行動する。
SNSのデマを拡散・信じる
大規模災害時にはデマ情報が飛び交います。過去の震災でも「水道水に毒が入った」「特定の施設が危険」などの根拠のない情報が混乱を招きました。NHK・自治体の公式情報のみを信頼する。
倒壊建物に不用意に入る
余震や「二次崩壊」のリスクがあります。閉じ込められた人の救出は、建物の安全を確認してから行うか、プロの救助隊を待つ判断も必要です。
🛡

生存のための5つの原則

🧠
原則1:落ち着いて考える
パニックは最大の敵です。深呼吸して状況を整理する。「今何が起きているか」「何が一番危険か」を冷静に判断する習慣を普段から訓練しておく。
🦺
原則2:まず自分を守る
負傷した状態では他者を助けられません。自分の安全を確保してから周囲を助ける。「自分が犠牲になって助ける」という考えは、被害者を増やすだけです。
📡
原則3:正確な情報を取る
情報のない行動は危険です。ラジオ・公式発表を継続的に確認し、周囲の状況変化(火災・余震・ライフライン)を把握し続ける。
🤝
原則4:助け合う
阪神大震災では隣人・近所の人に救われた命が多くありました。日頃からの近所づきあいが、いざというときの命綱になります。
🔋
原則5:体力・気力を温存する
72時間は長い時間です。無駄なエネルギーを使わず、睡眠と栄養をしっかり摂る。「できること」に集中し、「できないこと」を嘆かない。

よくある質問

Q.電車内で地震が発生したらどうすればいいですか?
①座席の人はかがんで頭を守る ②立っている人はつり革・手すりを両手でしっかり持つ ③揺れが収まるまで動かない ④アナウンスに従って行動する ⑤車両ドアを勝手に開けて線路に降りないこと(感電・接触事故の危険)。揺れが収まると乗務員から指示があります。
Q.子どもが学校にいる場合、迎えに行くべきですか?
学校は地震が発生すると「引き渡しカード」に登録された保護者以外への引き渡しを行いません。発生直後3〜6時間は学校に留まる方が子どもは安全です。道路の混雑・危険を確認してから、落ち着いて迎えに行くことをおすすめします。事前に学校の引き渡し方針を確認しておきましょう。
Q.スマホが繋がらない場合の連絡方法は?
171(災害用伝言ダイヤル):自分の電話番号に録音・再生できる。②Web171(disaster.kddi.com):インターネット版。③公衆電話:音声通話が繋がりやすく、災害時は無料開放される。④SNS(Twitter/X):比較的繋がりやすい。⑤事前の集合場所の取り決めが最も確実。
Q.ペットがいる場合の避難はどうすればよいですか?
環境省のガイドラインでは「同行避難」が推奨されています(ペットを連れて避難する)。ただし、多くの指定避難所ではペットの室内飼育は認められないため、避難所の屋外スペースやペット可の避難所を確認しておく必要があります。キャリーケース・リード・ワクチン接種証明・迷子札の準備も忘れずに。